- 2025年6月期は売上高も利益も過去最高を更新しました。
達成要因と率直な感想をお聞かせください。
辻村
まずは計画を着実に達成できたことを嬉しく思います。2025年6月期は、売上高5,075百万円(前年比+14.4%)、営業利益1,004百万円(+41.5%)と、過去最高の業績を達成しました。特に仲介ソリューションの伸びが顕著で、前年比+20.4%と大きな成長を遂げています。好調の背景には、着実なシェア拡大に加え、既存顧客へのクロスセル・アップセル施策が奏功したことがあります。また、解約率が0.4%と低水準で推移したことで、安定したストック収益が積み上がっております。
米津
過去最高の業績に加えて、創業以来31期連続の増収が達成できたことも大変嬉しく思います。成長を継続できているのは、長年にわたり当社のサービスをご利用いただいているお客さま、そして日々ご支援くださっている株主の皆さまのおかげであると感じております。この場を借りて、心より感謝申し上げます。
2025年6月期 決算ハイライト
- 売上高・利益ともに過去最高を更新。
営業利益は前期比+41.5%と増益基調を維持。
- 解約率が0.4%と低水準を維持できている理由は何でしょうか。
辻村
2025年6月期の解約率は0.4%と非常に低く、SaaSビジネスモデルとしても十分な水準を維持しています。導入時の稼働支援を手厚く行っていることに加え、現地訪問とオンラインを組み合わせたサポート体制を充実させていることが大きな要因です。また、AIチャットボットや定期的な顧客とのコミュニケーションを強化し、製品活用度を高めることで、長期的な利用を促しています。
米津
当社は創業当初から、導入後の支援を重視してきました。システムを提供するだけでなく、お客さまが「確実に使いこなし、成果を出すこと」をゴールとして、きめ細かなサポート体制を築いてきたことが、今日の成果につながっています。特に、稼働支援・訪問サポート・オンライン対応を組み合わせた積極的なサクセス支援は、競合優位性の高い当社の強みです。その結果が低い解約率につながり、ストック型ビジネスとしての強固な基盤を支えています。
- リアプロBBとリアプロの再統合の見通しについて教えてください。
辻村
現時点では再統合時期は未定ですが、中期成長戦略において最重要テーマの一つです。前回の統合時にはシステムの不具合が発生したため、今回はプログラムの最適化とデータ連携の見直しを徹底的に進めています。現状については、2025年6月18日の切り戻し以降は、「リアプロBB」「リアプロ」両サービスともに安定的に稼働しており、これまで通り各エリアでのシェア拡大に向けた施策を計画通り進めています。
米津
どちらのサービスも不動産業界の皆さまと共に築き上げてきたサービスです。再統合は、より多くのお客さまに、より使いやすく価値の高いサービスを提供するための重要な取り組みだと考えています。
具体的には、内見予約や入居申し込みといった不動産仲介に欠かせない業務がオンライン化され、従来は電話やFAXで行われていた不動産事業者間の物件情報共有も、オンライン上でリアルタイムに確認できるようになります。さらに、「リアプロBB」と「リアプロ」の統合により、分散していた空室情報が一つのデータベースに集約され、掲載可能な空室物件数が最大化されます。業界全体としても、業者間物件流通の効率化やデータ活用の重要性は年々高まっているため、再統合を通じて改めて日本最大級の業者間流通サービスを目指し、また、不動産業界全体にとって「なくてはならないインフラ」になることを目指します。
- 事業の中核である仲介ソリューション・管理ソリューションそれぞれの
シェア拡大の取り組みについて教えてください。
辻村
仲介ソリューションでは業者間物件流通サービスである「リアプロBB」および「リアプロ」を軸に顧客基盤と収益性を高めつつ、お客さまに価値を感じていただける有料オプションや関連サービスでさらに収益性を高めるモデルを強化しています。具体的にはポータルサイトやホームページでの集客、CRM(見込客管理機能)、IT重説、電子契約など周辺サービスとのクロスセルも積極的に推進し、お客さまが一連の業務をスムーズに進められる環境を提供しています。
管理ソリューションでは「賃貸革命」シリーズを中心に高いシェアを確保しています。今年8月にリリースした最新バージョン「賃貸革命11」は、AI OCRを活用した見積書自動取込や業務自動化機能、Excel連携など、多くの要望を反映した大幅な機能改善を実現しました。リリース直後から顧客評価も高く、新規導入だけでなく既存顧客へのオプション販売も順調に進んでいます。
- 長期的な成長ビジョン・M&A戦略について教えてください。
米津
当社は「不動産業界におけるDXプラットフォームの実現」を目指しており、今後は三つの柱で成長を推進します。第一に、リアプロBB・リアプロの再統合による業者間ネットワークの強化です。第二に、これまで蓄積した膨大な不動産データを活用した新規事業の創出で、Fintechや査定サービス、オーナー業務支援など、データドリブンな事業展開を進めます。第三に、M&Aを活用した事業ポートフォリオの強化です。これらを組み合わせ、業界に新たな価値を提供する企業へと進化していきます。
現時点で具体的に公表できる案件はありませんが、M&Aは当社の成長戦略における重要な柱です。特に、顧客基盤拡大につながる企業や、不動産関連データを保有する企業、そしてAIやSaaSに強みを持つ企業との連携に注力しています。既存事業とのシナジーを意識しつつ、業界におけるポジションをさらに高めていきたいと考えています。
- AIを活用したサービス展開について考えをお聞かせください。
辻村
当社ではAI技術を積極的に取り入れています。外部向けサービスでは、AI査定機能を搭載した「オーナー提案AIロボⅡ」を提供しており、適正な賃料設定や空室対策の提案が可能になりました。これにより、賃貸管理会社さまからは「オーナーへの提案力が上がった」「オーナーとの関係が深まった」といった高い評価をいただいています。また、AIチャットボットを導入することで、当社サービスを利用するお客さまからのお問い合わせ対応の効率化と顧客満足度の向上を同時に実現しました。
また、AIの専門部署であるAI・データ戦略室を中心に、活用領域をサービスだけでなく社内業務にも広げております。例えば、営業活動の最適化やサポート業務の自動化、顧客データを活用した解約予兆分析など、業務プロセス全体にAIを取り入れることで、より迅速で的確な意思決定が可能になると考えています。
米津
今後は、蓄積してきた膨大な不動産データをAIで分析し、需要予測や物件マッチングの最適化など、新しいサービス開発につなげる計画です。AIやデータ活用を会社全体の成長エンジンとし、業界に先駆けたDX推進企業としてのポジションを確立していきたいと考えています。
- 今後も増益基調を維持し、中長期的な成長が続くと考えてよいでしょうか?
辻村
当社は2025年6月期で過去最高益を達成しましたが、これは一過性の成果ではなく、今後も持続的な成長を続けるための基盤が整ってきた結果だと考えています。特に重要なのは、ストック型売り上げの比率が年々高まっていることです。当社はSaaSモデルを軸に事業を展開しており、解約率0.4%という非常に低い水準を維持していることで、安定した収益積み上げを実現できています。既存顧客へのクロスセルやアップセル施策も強化しており、顧客単価の向上がストック収益の増加につながっています。
米津
一方で、生産性を高めることも今後の成長に欠かせない要素だと考えています。AI・データ戦略室を中心とした施策により、顧客データを活用した最適な営業アクションの提案など、意思決定の質を高める取り組みも強化しています。これにより、効率的な運営体制と収益性の向上を両立させることを目指しています。
中長期的な成長の基本方針
- 増配を発表されていますが、今後の株主還元方針についてお聞かせください。
辻村
2026年6月期の期末配当については、1株当たり5円から8円への増配を発表いたしました。
当社は、「成長投資」と「株主還元」のバランスを重視する経営方針を掲げています。現在はSaaSサービスのシェア拡大や新規事業開発など、積極的な投資フェーズにありますが、一方で安定したキャッシュフローを背景に、株主の皆さまへの利益還元も適切に判断していきたいと考えております。
今後も、収益力の向上と株主還元の強化を両立させ、持続的に企業価値を高めることを最優先に経営を進めてまいります。
- 最後に、株主の皆さまへのメッセージをお願いします。
辻村
2025年6月期は過去最高益を達成できましたが、これは通過点にすぎません。当社は引き続き、業界DXのリーディングカンパニーとしての地位を確立するため、さらに挑戦を続けていきます。
特に、SaaSモデルによるストック型収益の拡大、AIやデータ活用によるサービス品質と業務効率の向上、そして不動産業界全体の発展につながるプラットフォーム戦略の三つを柱に、持続的な成長を目指します。
株主の皆さまには、長期的な企業価値向上と安定的な利益還元をお約束できるよう、引き続き全社一丸となって取り組んでまいります。最後に、当社の成長を支えてくださる株主の皆さまに、重ねて御礼申し上げます。これからも、ご期待にお応えできる企業であり続けるために、挑戦を続けてまいります。
米津
当社は、創業以来「お客さまに選ばれ続けるサービスを提供すること」を大切にしてきました。不動産業界が直面する課題を共に解決し、現場の皆さまの成功を後押しすることが重要であると考えております。今後も、AIやデータ活用など、業界変革の鍵となる領域に積極的に取り組んでまいります。そして、業界標準となるプラットフォームを確立し、不動産業界にとって「なくてはならない存在」を目指します。株主の皆さまには、これからも中長期的な視点でご期待いただけるよう、成長と安定を両立させる経営を続けてまいります。引き続き、変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。
2025年8月1日、「賃貸革命」の最新版がリリースされました。
初版リリースから30年近くにわたって支持され続けている「賃貸革命」は、
不動産管理業務の支援システムでトップシェアを築いています。
約8年ぶりとなる今回のバージョンアップでは、多様なユーザーのニーズを反映し、
業務効率化や生産性向上につながる機能を搭載しました。
その特徴と業績にもたらす効果について、開発と営業の部長に話を聞きました。
- 「賃貸革命」シリーズの最新版「賃貸革命11」の特徴を教えてください。
向原
「賃貸革命」は不動産管理業務の基幹システムで、1997年に最初のバージョンをリリースしました。以来、管理業務を幅広くカバーしている点、収入や支出といったお金の管理の正確性と処理スピードなどが高く評価され、ロングセラーとして多くのお客さまに支持されています。
最新版の「賃貸革命11」では、前バージョンからさらに処理スピードを速くしたほか、見積書などの自動読み込みと入力、仕訳、自社ウェブサイトとの連携、CSVによる他のソフトとの連携といった機能を拡充しました。
- 今回のバージョンアップによる「賃貸革命」の大きな変更点を教えてください。
中井
二つあります。一つは、AIなど最新技術を活用する機能を拡充し、お客さまの業務効率とUXの向上を実現した点です。二つ目は、ユーザーである賃貸管理会社さまから頂いている「こういう機能がほしい」「こんなふうに使いたい」といった声を幅広く実装したことです。
前バージョンの「賃貸革命10」をリリース(2017年)して以来、お客さまからの声には随時アップデートで対応してきましたが、システムの構造や特性として改善できないところもありました。「賃貸革命11」は、それらの制限を取り払い、より広範囲でお客さまのニーズに応えています。
- 拡充する機能群はどのように選んだのですか?
中井
強化や追加したい機能の選定では、システム導入に伴うお客さまのROI(投資収益率)を重視しました。「賃貸革命」は基幹システムであり、お客さまの操作時間が必然的に長くなります。1回5秒かかる作業が3秒になるだけでも、それが1カ月や1年といった単位では大きな効果につながり、新たに生まれた時間をより生産性が高い業務に振り向けることができるのです。
そこで、まずはお客さまが、どの業務にどれくらいの時間をかけているのかを定量的に把握するため、各業務を対象に時間当たりの生産性を分析しました。その結果を踏まえ、作業時間の短縮や工数の簡略化によって生産性向上に貢献する機能を優先的に選出しました。
- 「賃貸革命」に搭載した新機能の中で、特に注目してほしい機能を教えてください。
向原
新機能はいずれも自信がありますが、お客さまの業務効率化や生産性向上の観点では、その一つが、書類に書かれた金額などを項目ごとに判別し、自動入力するAI-OCRが大きなメリットを生み出すと思っています。
これは、書類の仕様を問わずAIが各項目の内容とや数字を自動で認識し、入力するものです。
例えば、入居者の退去時には修繕会社に原状回復の工事を依頼します。その際に受け取る見積書の仕様は会社ごとに違いがあり、従来は担当者が一つ一つ項目を見て金額を確認していました。
この手間と時間を軽減するため、当社のAI・データ戦略室と協力してAI-OCRを開発しました。これによりお客さまの負担が大幅に軽減し、打ち損じによるミスも減らせるようになりました。
- 今後の開発方針を教えてください。
向原
お客さまの入力作業を減らし、最終的にはゼロにしたいと考えています。これは当社の社長や会長もよく言うことで「キーボードがない世界」を目指してシステムのあり方を構想しています。
入力がいらない世界では、管理業務に関するあらゆる情報がいつの間にか入力され、担当者は必要な時にそれらを見るだけで仕事ができます。見たい情報を探す手間もAIによって省くことができ、「更新が近づいています」「このオーナーはこのような注意事項があります」といった情報をシステム側から通知してくれます。
そのような環境は、今の技術ではまだ実現できません。しかし、30年後なら十分にあり得ます。20年後には現実になっているかもしれず、10年後や5年後に実現できているかもしれません。
私たちは、前述したAI-OCRのほか、音声入力、生成AI、AIエージェントの開発などによって入力方法を変革し、その先頭を走りたいと思っています。
- 「賃貸革命11」の提供に向けた営業部門の方針を教えてください。
中井
私たちは創業から一貫してお客さまの目線に立ち、お客さまの役に立つDXを大事にしています。営業方針においてもその考えは重要で、リリースしたシステムでカバーできない実運用で生まれる細やかな課題を、私たち営業担当者やシステムアドバイザーが汲み取り、継続的なサポートとフォローを行っていきます。
例えば、当社はシステムアドバイザーと営業担当者が電話や訪問によって3カ月に1回を目安にお客さまの声を聞きに行っています。また、「賃貸革命」の各機能について、「どの機能がよく使われているか」「使われていない機能は何か」といったリサーチを行いながら、それをスコア化してお客さまの満足度の測定、ペインの発見、機能のアップデート、機能活用の提案などに役立てています。このような細かなコミュニケーションとヒアリングは、「賃貸革命」のアップデートにつながることはもちろん、当社への安心感や信頼の獲得につながる強みにもなっています。
- 今後の展望を教えてください。
中井
不動産DXの世界はまだまだ課題が山積しております。例えば、DXが進む一方では、同じデータを複数のツールに入力している、同じ作業を複数回行っているといった実態があります。私たちに求められている役割は顕在化しているニーズに応えるだけではありません。潜在的なシーズに目を向け、新しい解決策を作り出していくことが重要です。そのため、まずは賃貸管理に関わるあらゆる業務を「賃貸革命11」に統合し、業務の重複や非効率を解消していくことを目指します。そして、そのプロセスを通じて「賃貸革命11」の価値を一層高め、より多くのお客さまにとって欠かせない存在へと進化させていきたいと考えております。
向原
賃貸管理業務は、法令や政策などの変更に伴ってお客さまのニーズや最適なDXが変わります。そのような変化を素早く捉えながら、リリース後の機能改善を重ね、「賃貸革命11」をより価値あるシステムに育てたいと考えています。
今後もテクノロジーは進化を続け、業務支援システムに求められる機能も高度化されていきます。業務管理系のシステムは、現状はユーザーが入力した情報を保管し、整理するためのものですが、今後はAIの普及によって、システム側から施策などを提案してくれるエージェント型に進化していくであろうと感じております。そのような未来も見据えながら、お客さまに役立つシステムを提供し続けたいと思います。