全国主要地域賃貸市場動向:CRIX指標を活用した最新のエリア別分析

【CRIX vol.28】2026年5月 全国主要地域のCRIX一覧(空室率と平均支払賃料) 資料ダウンロード

不動産市場アナリスト : 藤井 和之
日本情報クリエイト株式会社 AI・データ戦略室執行役員 : 林 宏

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日本情報クリエイト株式会社(本社:宮崎県都城市、代表取締役社長:渡邉 良、以下「日本情報クリエイト」証券コード:4054)は、このたび賃貸不動産市場の指標であるCRIX指標を活用した月次レポートを公開したことをお知らせいたします。

本レポートでは、最新データに基づき、全国主要地域の市場動向を詳しく解説します。

※公表されている数値についての当社調べ。

 
 

東京23区のアパートの支払い賃料上昇はそろそろピークか、マンションは上昇継続

 

東京23区

 東京23区では、アパート・マンション共に、全面積帯で空室率の改善が継続しています。しかしながら、アパートの空室率の改善速度には減速感がみられます。特に単身者向け(0-20㎡、20-30㎡)は前月比でほぼ横ばいとなりました。平均支払い賃料(以下、支払い賃料)は、アパートの家族向けの50㎡-を除き、前月比で上昇していますが、アパートのその他の面積の支払い賃料の上昇幅も縮小しており、ピークを迎えつつあると考えられます。東京23区への人口流入超過数(12か月移動平均)は減少傾向で推移しており、2026年5月の流入超過数は、東京都下、神奈川県を下回りました。こうした、人口流入超過数減少の影響が、マンションに比較して競争力の弱いアパート市場に現れ始めていると考えられます。マンション市場は今のところ堅調に推移していますが、面積の狭い単身者向けの0-20㎡の支払い賃料の上昇幅が鈍くなり始めています。  

 

東京都下

 東京都下では、マンションの面積の広い単身者向けの20-30㎡を除き、空室率は前月比で改善しました。とはいえ、マンションの20-30㎡の空室率は、テナントの入れ替え期間を考慮すると、ほぼ満室稼働である4%台前半の低い水準で推移しています。東京都下への人口流入超過数は増加傾向で推移しており、2026年5月には東京都の人口流入超過数の過半数を超えました。これが東京都下のアパート・マンションの空室率改善に寄与しています。支払い賃料の上昇幅は、マンションの家族向けの50㎡-以外は物価上昇分を確保できていませんが、東京都下への人口流入超過増加傾向が継続すれば、支払い賃料の上昇幅が拡大してくる可能性が高いでしょう。 

 

神奈川県

 川崎市では、アパートの家族向けの50㎡-、マンションの面積の広い単身者向けの20-30㎡を除き、空室率は前月比で改善しました。

川崎市のアパート・マンション共に、すべての面積帯で空室率は4%台前半を下回っています。これは、テナントの入れ替え期間を考慮すると、ほぼ満室稼働であると考えられます。一方で、支払い賃料については、アパートはすべての面積帯で前月比下落、前年同月比では、50㎡-を除いて下落しています。マンションでは、前月比、前年同月比共に、面積の広い単身者向けの20-30㎡と50㎡-の支払い賃料は上昇傾向ですが、その他の面積帯では下落しています。2000年代前半以降の東京23区への人口集中や大学の都心移転の影響でテナントの抜けた空室を埋めるために賃料を下げていた可能性が考えられます。2026年に入って、神奈川県の人口流入超過数は増加傾向に転じました。川崎市の賃貸住宅は満室稼働に近づいていることから、近い将来に支払い賃料が上昇に転じる可能性が高いと考えられます。  

 横浜市では、アパートの家族向けの50㎡-を除き、空室率が前月比で改善しました。ただし、アパートの50㎡-の空室率は4%を下回っており、テナントの入れ替え期間を考慮すると、ほぼ満室稼働であると考えられます。アパート・マンション共に、空室率の改善幅が縮小してきています。横浜市は範囲が広いため、東京23区への通勤利便性が悪い地域では、神奈川県の人口流入超過数増加の恩恵を受けきれていない可能性があります。特に面積の狭い単身者向けの0-20㎡については空室率も高く、アパートは支払い賃料が下落傾向、マンションは2018年1月を下回る水準で推移しており、苦戦がうかがえます。その他の面積帯の支払い賃料は、マンションの面積の広い単身者向けの20-30㎡を除き、概ね横ばい傾向となっています。  

 

埼玉県

 さいたま市では、アパートのカップル向けの30-50㎡を除く面積帯、およびマンションの面積の広い単身者向けの20-30㎡の空室率が前月比で改善しました。マンションの支払い賃料はすべての面積帯で上昇傾向となっていますが、マンション賃料に割高感が出てきた可能性があります。埼玉県への人口流入超過数は2026年に入って増加傾向となっていますが、さいたま市のマンションは恩恵を受けきれていないようです。アパートの家族向けの50㎡-の支払い賃料は2018年1月水準を大きく下回っており、築古の物件が多い、交通利便性の悪い物件が多い等の可能性が考えられます。 

 

千葉県

 千葉県西部(柏市、松戸市、流山市、我孫子市、市川市、浦安市、習志野市、船橋市)では、アパート・マンションのすべての面積帯で空室率の改善が継続しています。面積の狭い単身者向けの0-20㎡の支払い賃料の上昇幅が、アパート・マンション共に大きくなっています。浦安市等、東京23区への通勤・通学利便性の高い地域に居住する単身者が増加したものと考えられます。その他の面積帯の支払い賃料は、アパートは横ばい傾向、マンションは上昇傾向で推移しています。東京23区への人口流入超過数の減少の恩恵を千葉県は未だ受けていません。今後、千葉県の人口流入超過数が増加に転じればアパートの支払い賃料の上昇幅が拡大する可能性があります。 

 

札幌市

 札幌市では、アパートは家族向けの50㎡-を除く面積帯で空室率が前月比で回復、マンションはすべての面積帯で空室率が悪化しました。マンションは前年同月比の空室率も、面積の狭い単身者向けの0-20㎡を除き悪化しており、供給過剰となっていると思われます。0-20㎡は、アパート・マンション共に、前月比、前年同月比で支払い賃料が下落しています。賃料を下げて空室を埋めている、民泊業者等にバルクで貸し出しをしている等が考えられます。面積の広い単身者向けの20-30㎡の支払い賃料も、アパート・マンション共に上昇幅が縮小しています。以上から、単身者向け市況が悪化していることがうかがえます。札幌市では、唯一、50㎡-のみが比較的好調に推移しています。 

 

仙台市

 仙台市では、アパートは全面積帯で、マンションは家族向けの50㎡-を除く面積帯で、空室率が前月比で改善しました。面積の狭い単身者向けの0-20㎡の空室率は、アパート・マンション共に15%超の高い水準で推移しています。アパートの支払い賃料は、0-20㎡と50㎡-で下落傾向、カップル向けの30-50㎡で横ばい傾向が継続しています。マンションの支払い賃料は、0-20㎡を除く面積帯は上昇基調で推移しています。0-20㎡の支払い賃料は、アパート・マンション共に下落傾向で推移しています。アパートは2018年1月と同水準、マンションは2018年1月を大きく下回る水準であり、供給過剰であると考えられます。 

 

名古屋市

 名古屋市では、アパートの面積の狭い単身者向けの0-20㎡、マンションの面積の広い単身者向けの20-30㎡、カップル向けの30-50㎡の空室率が前月比で悪化、その他の面積帯の空室率が前月比で改善しました。支払い賃料は、アパートの0-20㎡、20-30㎡、マンションの20-30㎡が前月比で悪化しており、名古屋市では単身者向けの市況が弱含みとなっています。唯一、家族向けの50㎡-の支払い賃料は、アパート・マンション共に上昇基調を維持しています。住宅価格の高騰から、購入を断念した層の需要を取り込んでいると考えられます。  

 

京都市

 京都市では、アパート・マンションのカップル向けの30-50㎡、家族向けの50㎡-、マンションの面積の広い単身者向けの20-30㎡の空室率が4%前後で推移しています。これは、テナントの入れ替え期間を考慮すると、ほぼ満室稼働であると考えられます。しかしながら、アパートの30-50㎡の支払い賃料は2018年1月水準を大きく下回っており、築古等、競争力の弱い物件が多いと考えられます。20-30㎡、50㎡-の支払い賃料は、アパート・マンション共に上昇基調で推移していますが、0-20㎡の支払い賃料は、アパート・マンション共に2018年1月水準を下回っており、京都府では、単身者向けは面積の広い方が選好されていると考えられます。 

 

大阪市

 大阪市のマンションの空室率はすべての面積帯で改善しました。支払い賃料は、アパート・マンションの全面積帯で前月比上昇しましたが、面積の狭い単身者向けの0-20㎡の支払い賃料は、アパート・マンション共に2018年1月水準を下回っており、大阪市では、単身者向けは面積が広い方が選好されていると考えられます。アパートの家族向けの50㎡-についても、支払い賃料が2018年1月水準を下回っており、交通利便性が悪い、築古等の競争力が弱い物件が多い可能性を示しています。マンションのカップル向けの30-50㎡、家族向けの50㎡-は、住宅価格の高騰から購入を断念した層の需要を取り込んでいることから、支払い賃料は上昇傾向で推移しています。  

 

福岡市

 福岡市では、アパートは全面積帯で空室率が前月比で改善しましたが、マンションの空室率は家族向けの50㎡-を除いて、空室率が前月比で悪化しました。特にマンションの面積の広い単身者向けの20-30㎡の空室率は前年同月比でも悪化しています。アパートの20-30㎡の支払い賃料は2024年中旬から大きく下落しており、その1年半後から空室率が改善し始めています。一方で、マンションの20-30㎡の支払い賃料は2024年中旬から弱含みとなり、アパートの空室率の改善と同時期にマンションの空室率が悪化しています。以上から、20-30㎡が供給過剰となり、2024年中旬以降に調整局面に入ったこと、アパートの賃料に割安感が出始めたことから、2026年以降はアパートが選好され始めたことがうかがえます。住宅価格の高騰から購入を断念した層の需要を取り込んでいることから、カップル向けの30-50㎡の支払い賃料は、アパート・マンション共に2026年に入ってから上昇傾向で推移しています。一方で、家族向けの50㎡-の支払い賃料には頭打ちの兆しがでてきました。  

 

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