全国主要地域賃貸市場動向:CRIX指標を活用した最新のエリア別分析

【CRIX vol.21】2025年10月 全国主要地域のCRIX一覧(空室率と平均支払賃料) 資料ダウンロード

不動産市場アナリスト : 藤井 和之
日本情報クリエイト株式会社 データ戦略室執行役員 : 林 宏

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日本情報クリエイト株式会社(本社:宮崎県都城市、代表取締役社長:辻村 都雄、以下「日本情報クリエイト」証券コード:4054)は、このたび賃貸不動産市場の指標であるCRIX指標を活用した月次レポートを公開したことをお知らせいたします。

本レポートでは、最新データに基づき、全国主要地域の市場動向を詳しく解説します。

※公表されている数値についての当社調べ。

 
 

賃貸住宅の家賃改定は難航

 

東京23区

東京23区ではアパート・マンション共にすべての面積帯で空室率が改善しました。募集賃料の上昇は継続していますが、マンションの家族向け(50㎡-)を除き、平均支払い賃料(以下、支払い賃料)の上昇は伸び悩んでいます。東京23区の2025年10月の消費者物価指数は前年同月比+2.8%でしたが、アパートの支払い家賃の年間上昇率は0-20㎡が+0.39%、20-30㎡が+0.55%、30-50㎡が+0.34%と、消費者物価上昇率に比較して低い水準にとどまっています。50㎡-は▲0.47%と、逆に下落しています。マンションの支払い家賃の年間上昇率はアパートよりも高く、0-20㎡が+1.79%、20-30㎡が+1.82%、30-50㎡が+1.99%、50㎡-は+4.55%であり、50㎡-は消費者物価指数の上昇率を上回っていますが、その他の面積帯の上昇率は消費者物価指数の上昇率を下回っています。

 

東京都下

東京都下では、アパート・マンション共に、全面積帯で空室率の改善が継続しており、家賃の高い東京23区を避けたテナントの受け皿になっていることがわかります。

一方で、アパートの20-30㎡、50㎡-の支払い賃料が前月比で下落、マンションの20-30㎡、30-50㎡の支払い賃料が前月比横ばいとなっています。またアパートでは全ての面積帯の支払い賃料が前年同月比で下落しており、家賃の高い物件が敬遠され始めている、もしくは築古の物件が家賃を下げて空室を埋めている可能性が考えられます。マンションでは0-20㎡の支払い賃料の上昇率が消費者物価指数の上昇率を上回っています。また、50㎡-の支払い賃料の上昇率が消費者物価指数とほぼ同じ上昇率となっています。対して、20-30㎡、30-50㎡の支払い賃料の上昇率は消費者物価指数の上昇率を下回っています。

 

神奈川県

川崎市でも、アパート・マンション共に、全面積帯で空室率の改善が継続しています。しかしながら、アパート・マンション共に50㎡-を除いて、前月比で支払い賃料が下落しており、家賃の高い物件が敬遠され始めている、もしくは築古の物件が家賃を下げて空室を埋めている可能性が考えられます。前年同月比の支払い賃料に至っては、アパートの50㎡-を除いて下落しています。さらに、アパートの50㎡-の支払い賃料の上昇率も消費者物価指数の上昇率を下回っており、賃貸住宅の賃料改定が順調に進んでいないことがうかがえます。

横浜市では、アパート・マンションのすべての面積帯で空室率の改善が継続しています。支払い賃料は、アパート・マンション共にすべての面積帯で、前月比で横ばいもしくは微増となっています。ただし、前年同月比の支払い賃料の上昇率は、アパートの30-50㎡が微減、マンションの0-20㎡がマイナスとなっています。またその他の面積帯の支払い賃料の上昇率は、消費者物価指数の上昇率を下回っており、賃貸住宅の賃料改定が順調に進んでいないことがうかがえます。

 

埼玉県

さいたま市では、マンションの0-20㎡を除き、空室率が前月比で改善しました。支払い賃料は、アパートの50㎡-を除き、前月比で上昇しています。さいたま市では、空室率の上昇が1年近く継続していたことから、テナントの入れ替わりが進んでいると考えられます。このため、前年同月比の支払い賃料の上昇率は、アパート・マンションの20-30㎡で消費者物価指数の上昇率並み、マンションの0-20㎡、30-50㎡、50㎡-は消費者物価指数の上昇率を上回っています。しかし、アパートの0-20㎡、30-50㎡は消費者物価指数の上昇率の半分程度の上昇にとどまっています。なお、アパートの50㎡-の支払い賃料は、ここ2年は下落が継続しています。

 

千葉県

千葉県西部(柏市、松戸市、流山市、我孫子市、市川市、浦安市、習志野市、船橋市)では、アパート・マンション共に空室率の改善が継続しています。一方で、支払い賃料は、アパートの全面積帯とマンションの0-20㎡で、前月比で下落しています。前年同月比の支払い賃料上昇率は、アパートの0-20㎡、50㎡-、マンションの0-20㎡でマイナス、アパートの20-30㎡、30-50㎡、マンションの30-50㎡、50㎡-については、上昇しているものの消費者物価指数の上昇率を下回っています。消費者物価指数の上昇率並みに支払い賃料が上昇しているのは、唯一マンションの20-30㎡のみであり、賃貸住宅の賃料改定が順調に進んでいないことがうかがえます。 

 

札幌市

札幌市では、アパートの0-20㎡、20-30㎡を除き、空室率が前月比で改善しました。支払い賃料は、アパートの0-20㎡、30-50㎡、マンションの0-20㎡が前月比で下落、その他は前月比で微増にとどまっています。前年同月比の支払い賃料上昇率は、アパート・マンション共に0-20㎡で大きくマイナスとなっています。一方で、アパートの50㎡-の支払い賃料上昇率は、消費者物価指数の上昇率を上回っています。その他の面積帯の支払い賃料の上昇率は消費者物価指数の上昇率を大きく下回っており、賃貸住宅の賃料改定が順調に進んでいないことがうかがえます。 

 

仙台市

仙台市では引き続き、面積の狭い単身者向け(0-20㎡)の空室率が高い水準で推移しています。その他の面積帯の空室率は改善傾向にあります。前月比の支払い賃料は、アパートの30-50㎡、50㎡-、マンションの0-20㎡で下落しました。その他の面積帯の支払い賃料は前月比で上昇しているものの、小幅にとどまっています。前年同月比の支払い賃料の上昇率は、マンションは0-20㎡を除き、消費者物価上昇分と同等もしくは上回っており、賃料改定が順調に進んでいると考えられます。アパート・マンションの0-20㎡、アパートの50㎡-の支払い賃料の上昇率は前年同月比でマイナス、アパートの20-30㎡、30-50㎡の支払い賃料の上昇率は消費者物価指数の上昇率の半分程度の上昇にとどまっており、賃料改定が順調に進んでいないことがうかがえます。

 

名古屋市

名古屋市では、アパート・マンション共に前月比で空室率は改善しています。前月比の支払い賃料は、アパートの30-50㎡で下落、アパートの0-20㎡とマンションの30-50㎡が横ばい、その他の面積帯では上昇しています。前年同月比の支払い賃料の上昇率は、マンションの0-20㎡で消費者物価指数の上昇率の2倍超の伸びを示しており、賃料改定が順調に進んでいる、もしくは築浅物件への入れ替わりが進んでいると考えられます。その他の面積帯の支払い賃料の上昇率は、消費者物価指数の上昇率を下回っています。特にアパートの30-50㎡の支払い賃料は前年同月比でマイナスとなっており、経営環境の厳しさがうかがえます。

 

京都市

京都市では、アパート・マンション共に空室率は改善傾向で推移しています。一方で、アパートの支払い賃料は0-20㎡、30-50㎡で下落傾向が続いており、これらの面積帯では賃料を下げて空室を埋めている可能性があります。前年同月比の支払い賃料の上昇率は、マンションの50㎡-は、消費者物価指数の上昇率を上回っていますが、その他の面積帯では消費者物価指数の上昇率を下回っており、賃貸住宅の賃料改定が順調に進んでいないことがうかがえます。

 

大阪市

大阪市のマンションの空室率は全ての面積帯で前月比の空室率が改善しました。前月比の支払い賃料も、すべての面積帯で上昇しています。前年同月比の支払い賃料の上昇率は、マンションの30-50㎡、50㎡-で消費者物価指数の上昇率を上回っています。0-20㎡、20-30㎡の支払い賃料の上昇率は、消費者物価指数の上昇率を下回っているものの、比較的高水準であり、大阪市のマンションの賃料改定は比較的順調に進んでいると考えられます。

 

福岡市

福岡市では、アパートの50㎡-を除き、空室率が前月比で改善しました。一方で、アパート・マンションの20-30㎡、マンションの30-50㎡では支払い賃料の下落が継続しており、経営環境の厳しさがうかがえます。前年同月比の支払い賃料の上昇率は、アパートの50㎡-で消費者物価指数の上昇率を上回っていますが、その他の面積帯の支払い賃料の上昇率は、消費者物価指数の上昇率を大きく下回っている、もしくはマイナスであり、賃貸住宅の賃料改定が進んでいないと考えられます。 

 

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CRIX(クリックス:Create Rental housing Index)は、当社が保有する膨大な量の賃貸住宅管理データ(ビッグデータ)より算出した、賃料・空室状況に関するインデックスで、次のような特徴を持っています。

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