不動産テック最新動向!団体や不動産テック比較(2021年9月版)

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不動産テック最新動向!団体や不動産テック比較(2021年9月版)

2021年、不動産業界はテクノロジーによる変化が起きたか?
不動産業界に従事している方々の関心事ではないではないでしょうか。

ソフトウェアやIoTなどのハードウェアを活用して、旧態然のやり方をデジタル・トランスフォーメーション(DX)することによって改善する「不動産テック」は、不動産会社の仕事や生活に変化をもたらしています。
この記事は、以下の3点をまとめております。

1.不動産テックの歴史

1-1. 起源と代表例

不動産テックは、リアルエステートテック(Real Estate Technology)として、フィンテック等、X-Techとしての派生した造語であり、言葉の源流は米国の「Real Estate Tech」が起源とされています。
現在のインターネットを活用した不動産テックは、おおよそ15年程前の2006年頃から産声をあげたといえます。米国の不動産テックでの代表格は、Zillow社、Compass社、Open Door社などが挙げられます。

Zillowは2006年に設立され、今や米国全土に渡る売出し中の物件以外のデータを含め1億件もの物件情報を有する不動産検索サイト。同社によると、毎月2億人ものユーザーがZillowのウェブサイトやアプリを利用しているそうです。TIME誌では、2021年4月に「最も影響力ある企業100社」にZillowを指名し米国内では知名度が高い企業とされています。(※出典:1)

Zillowスクリーンショット画像(Zillowスクリーンショット画像)

Compassは日本でもソフトバンク・ビジョン・ファンドなどから、1710億円と多額の資金を調達したニュースもあり、日本国内でも認知度が高いのではないかと思います。
2021年4月にニューヨーク証券取引所で上場し、売上高は2018年12月決算によると884700千米ドル、2019年には、2.69倍の2386000千米ドル、2020年は、1.55倍の3720800千米ドルと売上高を倍増させている企業です。
同社は不動産業者向けの独自のモバイルアプリを構築した最初の企業で、モバイルアプリは、最近の取引データや過去の販売動向へのアクセスを提供するリアルタイムの住宅用不動産データを備える等、不動産買い手側のエージェントが必要とするITツールを提供。現在では2万人以上のエージェントを雇用し、米国の上位20都市の高級住宅を専門としたオンライン不動産ブローカーとして販売数を伸ばしている不動産テック企業です。(※出典:2)

(Compassスクリーンショット画像)

Open Doorはは2014年に設立された、オンライン買取再販を主要事業としており、創業から2年8ヶ月でユニコーン企業として話題になった不動産テック企業です。
同社は旧来の買取業務で行っていた「売却の相談→物件の確認・査定→媒介契約→売却活動(内覧)→申し込み→売買契約→手続き→決済、引き渡し」といった売却プロセスを、査定、買取、入金といった手続きをオンラインで実現できるため、転居先の購入計画での売却にかかる待ち時間を短縮でき、売却にかかる手数料も一般的な不動産業者だと平均6〜10%の手数料を課すのに対し、同社は平均6.7%と価格的な優位性があるサービスを打ち出し買取再販を伸ばしています。(※出典:3)

Compassスクリーンショット画像(OpenDoorスクリーンショット画像)

米国不動産テック企業の多くは、COVID-19パンデミックが従来の対面方式や書面を取り交わす「業務ルーチン」からの事業環境の変化を揺さぶったため、新しい価値である不動産テックのソリューションの需要が急増しておりウィズコロナ時代における不動産テックの需要は増していくものと考えられます。(※出典:4)

1-2. 日本国内の不動産テックの歴史

国内の不動産テックは、米国と比較とすると未成熟であると言えます。テクノロジーという観点で、1つ例として挙げられるのが国土交通省から指定を受けた不動産流通機構が運営しているレインズが挙げられると思います。
東日本不動産流通機構の沿革によると、22年前1999年8月にインターネットの普及に伴い、会員の端末形態にIP型という、いわゆるインターネットの通信を利用してパソコンで不動産情報が入力、閲覧できるようになりました。この流れは、日本国内における不動産テックのはしりとも言えます。(※出典:4)
法規制の面で米国の不動産テックと比較をすると、日本のレインズは専属専任媒介契約の場合であれば媒介契約を受けてから、5日以内に指定流通機構に登録すること。専任媒介契約であれば、7日以内という法規制があります。これに対し、米国のレインズとも言える、不動産業者が利用するMLS(Multiple Listing Service )は、契約から24時間~48時間以内に物件を登録することが義務付けられています。ニューヨーク市は24時間以内と情報取得から登録までの時間が短く、市場に流通されるタイミングが日本よりも圧倒的に早いという実情が米国と日本の差と言えるでしょう。(※出典:5)

(MLS.com スクリーンショット画像)

不動産テックは、インターネット通信速度、クラウド・コンピューティングにより、大量のデータを処理できるように環境が変化してきたこと、コンピューターの情報処理能力が飛躍的に向上したこと、スマートフォンという小型コンピューターを誰しもが身につける時代になった現代で、情報が早く入手できるばかりでなく情報の確かさが求められています。このような時代的な背景を踏まえると、日本国内の情報登録における義務化など米国と比較すると、整備しなければならない点が多くあります。

このような比較による差異点や、日本国内の不動産流通市場における情報整備のありかたは、国土交通省からも「不動産に係る情報ストック整備」について専門家にて議論や、研究されており情報公開が2012年頃より始まっております。(※出典:6)

2021年現在でも登録義務の法規制は変わっておりませんが、近年では国土交通省による不動産取引価格情報や不動産価格指数を2018年から公開する等、政府が開示するオープンデータや、公開されているサイトからデータスクレイピングの技術などを活用したビッグデータサービスやAIサービスが利用できるようになった為、多くのスタートアップ企業が、不動産テックを掲げてサービスを開始するようになりました。

   

2.不動産テック業界の団体や動き

2-1. 不動産テックにまつわる団体やメディア

当社、日本情報クリエイトも加盟しておりますが、不動産テック協会という団体がありますが、以下関連する団体をご紹介します。

不動産テック協会

2018年に設立された団体で、不動産テックカオスマップで著名。2021年9月時点で116社の加盟企業が加盟しています。
特徴としては、情報流通部会、電子化部会、業界マップ部会、物件流通部会、不動産金融部会、海外連携部会といった6つの部会の活動があり、セミナーやウェビナーで業界にとって有益な情報公開をされています。

(https://retechjapan.org/news/archives/20210708_chaos_map/スクリーンショット画像)

DX不動産推進協会

2021年4月に設立された、主にサブリース企業で理事が構成された団体。代表理事に、株式会社Robot Home、理事に株式会社GA technologies、プロパティエージェント株式会社、株式会社Casa、株式会社AMBITION、株式会社ZUU、株式会社 Residence kitで構成されています。

DX不動産推進協会のWebサイトでは、【「不動産取引の全面電子化」を一丁目一番地として掲げ、民間の立場から政策提言を行うと同時に、未来の不動産の品質を変える、そして売買のあり方を変えることで、国民生活の住生活環境・利便性向上に寄与し社会に貢献してまいります。】と表明しており、不動産契約の全面電子化、不動産トレーサビリティに紐づく電子契約システムの確立の実現に向けて活動をされているようです。

(https://www.dxppa.or.jp/スクリーンショット画像)

不動産テック専門メディア スマーブ

団体ではなくメディアですが、運営元は株式会社リブセンス。運営パートナーにハウスコムテクノロジーズが運営しているサイト。スマーブ。Webサイトでは不動産テックという、かなり尖ったメディアですが、2021年9月11日時点でPR記事(3)、イベント告知(1)、業界分析(144)、海外事例(20)、製品・サービス(17)、イベントレポート(80)、インタビュー(54)と、319も専門的な記事が掲載されている面白いメディアです。(※出典:7)

このように各団体での動きもありつつ、不動産企業が自らテクノロジー企業として活躍されている会社様も増えてきています。米国のテック企業は不動産企業の事業領域に。日本の不動産企業はテック企業の事業領域に。当社はテック企業として不動産企業様を支援する立場であります。どちらの立場であっても業界発展のために業界関係者との関係性や動向に関してはこれからますます目が離せなくなるのではないでしょうか。

(https://www.sumave.com/about-sumave/スクリーンショット画像)(※出典:7)

   

3.「未来予測」テクノロジーの進化と業界変化予測

3-1. 現在課題とデジタルトランスフォーメーション(DX)

現在の課題は従来業務がアナログであるため、業務をデジタル化させていく必要があり時代の変革期といえます。不動産テックをもちいてデジタルトランスフォーメーションを実現しようと、従来の手書きで行っていた業務をパソコンで処理できるように置き換えていくことを想像される方々がまだ多く見受けられるように(筆者は)思います。
手書きをパソコンでの入力に置き換えることは、デジタル・トランスフォーメーション(DX)でしょうか。いいえ、違います。
経済産業省によるとDXは以下のように定義されています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や 社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
経済産業省「DX 推進指標」とそのガイダンス資料によると、データをリアルタイムで使える、部門を超えて全社最適で活用できる等の要素を示しています。

「DX による価値創出に向けて、その基盤となる IT システムがどうあるべきか、認識が十分とは言えない」
DX を進める基盤として、IT システムに求められる主要な要素は、以下の3つ 。

  • ①データをリアルタイム等使いたい形で使えるか
  • ②変化に迅速に対応できるデリバリースピードを実現できるか
  • ③データを、部門を超えて全社最適で活用できるか

しかしながら、多くの日本企業では、部門ごとに個別最適でシステムを構築し、しかも過剰なカスタマイズにより、IT システムがブラックボックス化してしまっている。これを解消できないと、全社的に DX を展開することは困難である。
こうした中、IT システムの話になると、経営者は IT 部門に任せてしまう ケースが多い。DX による価値の創出に向けて IT システムをどのように見直すのか、経営者 自らがリアルに認識し、必要な打ち手を講じていくことが不可欠である。

(※出典:8)

3-2. DXによってもたらされる未来

DXは不動産事業者だけでなく、消費者や所有者に対しても明るい未来をもたらしてくれることになるでしょう。不動産業界にある伝統的な情報の非対称性、時代遅れなプロセス、不合理なコストといった課題をも解決することができるでしょう。
そのためには、不動産事業者が自らDXに対する理解を深めていただくことが必要だと考えます。DXによってもたらされる未来を以下の2つの視点で想像してみましょう。

①データはリアルタイムで処理
②データを視覚的に判断、未来予測

①データリアルタイムで処理

不動産業界はこれまでFAXによる通信が多用されていました。空室情報、申込情報、審査情報など様々な情報を紙媒体に出力し、再度、人の手で転記する。スマートフォンなどのデバイスでユーザーが処理したデータが二次的、三次的に連携され展開されることで、中間の転記作業時間が減るだけでなく、情報の経路や信ぴょう性、信用性が高まることで情報の価値が上がります。そのため欠かせないのは最初のデータをインプットするところで正確にインプットされることが肝心なのです。入力するのは人間ですから、勘違いや間違いも当然のようにあるわけです。テクノロジーとしては、「間違いに気がつく」または「間違えにくい」、デザインや機能が必要となります。

「間違えにくい」機能の代表例はGoogleの検索ではないかと思います。例えば、「総理大臣 にんき」と入力すると以下のような検索候補が表示されます。
また、入力まちがいに気がつくように、利用者の操作体験を向上させています。

不動産に限らず、多くのデータを取り扱い、正しい情報を管理するには入力(インプット)しやすい機能やデザインすることは、必要不可欠と言えます。

リアルタイムで処理することは、どのような場面でも必要不可欠とされます。
不動産であれば、以下のような場面ではないでしょうか。

消費者の例

  • 契約可能な物件を探す時 (可能なものだけを調べたい)
  • 人気の物件をいち早く契約したい時
  • 契約にまつわる費用を知りたい時
  • 契約における審査の回答を知りたい時

不動産業者の例

  • 物件を受託していち早く募集したい時
  • 消費者からの問合せに対していち早く応えたい時
  • 紹介時にブッキングしていないか、類似物件がないか知りたい時
  • 申込に複数の関係者とのやり取りがある時

不動産会社や消費者が求める上記のような事は、すでに多く不動産テック企業が解決できるようにサービス化しているものがあり、さらに発展していくものと思われます。

②データを視覚的に判断、未来予測

不動産のデータといえば、物件の価格推移をグラフにしたものや、色分けした価格相場の地図(ヒートマップ)など、目にしたことがあるのではないでしょうか。こういったツールの多くは過去の情報をもとに表示しており、予測については最終的に人間がするという使い方が多く存在していました。近年はAI技術の向上により、価格査定も実売価格との差異もわずか数%というレベルで、人が経験と勘で査定するものよりも信憑性が高く実運用に利用できると不動産企業の評判も高まっています。
AIは学習した量によって予測値が向上するため、情報の質量が重要になります。大容量のデータを統計、パターン認識、データ解析するデータマイニング技術を活用することで、予測可能な範囲が広がると考えられます。

現在の技術革新の速度は、日進月歩どころか分進秒歩で、ここ十数年で進化の速度が早くなっています。エンジニアでもない方が、こういった不動産テックのすべてを理解したり、使いこなしたりすることは非常に難しいものです。

日本情報クリエイト株式会社としては、このような難しい情報を噛み砕いて、少しでもわかりやすくお届けし、お役に立てる不動産テックサービスで業界を良くしていければと思っております。

   

次回予告(日本情報クリエイトの不動産テック解説)

当社も不動産テック企業として、社会に役立つサービスを展開しております。
次回の記事は当社がどのようなテクノロジーで不動産業界へサービスを展開しているのかも解説をしてまいりたいと思っております。次回の記事もどうぞお楽しみにしてください。

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