政令指定都市の賃貸住宅市場~千葉市

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不動産市場アナリスト : 藤井 和之
日本情報クリエイト株式会社 データ戦略室執行役員 : 林 宏

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今回は21大都市のひとつである千葉市の賃貸住宅市場について確認しましょう。

 

千葉市の人口の特徴

筆者は21大都市を、大都市型、独立都市型、学園都市型、地方中核都市型、地方都市型の5つに分類していますが、千葉市は地方中核都市型の都市に分類されます。

大学進学による流入がある反面、大都市型への学生の流出もあるため、18歳~22歳の年齢別人口比の上昇は僅かなものにとどまっています。

一方で就職による流出で23歳~29歳の年齢別人口比が落ち込んでいます。大都市型の都市へのストロー効果に抗えず、大都市としての求心力が保てなくなりつつあるのが地方中核都市型の都市の特徴です。

図1:千葉市と全国の年齢別人口比 総務省「2020年国勢調査」より作成

 

千葉市の世帯数と人口の推移

千葉市の「平成4年(1992年)~令和4年(2022年)の町丁別人口及び世帯数」から作成した千葉市の各月末時点の世帯数と人口の推移を図2に示します。地方中核都市型ではありますが、千葉市の世帯数、人口共に増加傾向で推移しています。これにはふたつの理由があります。

図2:千葉市の世帯数と人口の推移 千葉市「平成4年(1992年)~令和4年(2022年)の町丁別人口及び世帯数」から作成

ひとつ目は、広域の圏別でみると、千葉市が所在する東京圏は唯一の勝ち組であり、全国から人口が流入していることです。

ふたつ目は、新型コロナウイルス感染拡大の影響です。2020年度以降に東京都への人口流入が減少しましたが、千葉県への人口流入は逆に増加しました(図3)。これは感染者の多い東京都を避け、隣接する千葉県へ転入・移動した人が増加したことを示しています。

以上を踏まえてCRIXの指標を確認しましょう。

図3:2019年度~2023年度の人口移動(2023年度は4月~7月)総務省「住民基本台帳人口移動報告」より作成

 

CRIXの指標からみる千葉市の空室率と賃料の推移

CRIXから作成した千葉市の面積別空室率推移を図4に、面積別賃料指数(2020年1月=100)の推移を図5に示します。

新型コロナウイルス感染拡大期においても人口および世帯数が増加していたことから、空室率には全体的に大きな変化は見られません。2021年中旬に一時的に空室率の上昇がありますが、これは千葉市における貸家着工数が増加したことが要因と考えられます。世帯数の継続的な増加に伴い需給のバランスが取れたことから2022年以降の空室率は安定して推移しています。

なお、2020年4月~9月にかけて50㎡以上の賃貸住宅の空室率が急減しているのは、緊急事態宣言発令により急増したテレワーク需要増加によるものと考えられます。

図4:千葉市の面積別空室率推移 CRIXより作成

 

千葉市の面積別賃料指数推移

空室率が安定、つまり需要と供給が安定しているにも関わらず、賃料指数は継続して低下傾向にあります。これはなぜでしょうか?総務省の「2018年住宅・土地統計調査」にそのヒントがあります。

2018年時点の賃貸住宅の空室率は、全国が18.5%に対し、首都圏のしかも政令指定都市である千葉市は19.2%と高い値です。つまり千葉市の賃貸住宅市場が供給過剰状態であったことがわかります。このため、千葉市にはコラム「賃貸住宅指標が指し示すものを正しく認識しよう」で解説した、自主募集・自主管理で募集データや管理データに反映されないCクラスの物件が多く存在していると考えられます。

人口や世帯数が増加傾向で推移したことで需給バランスが変化した結果、賃料が低いCクラスの一部がBクラスに浮上したことで、平均賃料が押し下げられたと考えるのが妥当です。

新型コロナウイルスが第5類に移行したことにより、東京圏の人口移動はコロナ前の状況に戻りつつあります。これは、千葉市の賃貸住宅需要を押し上げていた要因の一つが消えつつあることを示しています。これに対して、貸家の着工数(供給)水準は上昇したままですので、今後の需給バランスの変化に注意が必要です。

図5:千葉市の面積別賃料指数推移(2020年1月=100)CRIXより作成

図6:千葉市の貸家着工数推移(12か月移動平均)国土交通省「住宅着工統計」より作成

 

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