戦略的な空室対策の重要性(前篇)

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戦略的な空室対策の重要性(前篇)

不動産市場アナリスト : 藤井 和之
日本情報クリエイト株式会社 データ戦略室執行役員 : 林 宏

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総務省の「2018年住宅・土地統計調査」によると賃貸用の住宅の空き家は過半数の約433万戸、空室率は18.5%(図1)であり、既に約5戸に1戸が空室となっています。

図1 賃貸住宅の空室率の推移(全国)
  総務省「平成15年~30年住宅・土地統計調査」より作成

また、国立社会保障・人口問題研究所は、2023年をピークに日本の世帯数は減少傾向となると推計しています。空室の原因を分析し、戦略的な対策を実施することの重要性が増しています。

今回は、空室が増加する原因について解説します。

 

空室が発生する原因

空室が発生する原因は、ミクロ市場(物件周辺・短期の市場動向)の問題マクロ市場(広域的・長期的な市場動向)の問題に切り分けることができます。

現時点で影響を受けていないように見えても、長期スパンではミクロ市場はマクロ市場の影響を受けながら変化していきます。

 

ミクロ市場の問題

ミクロ市場の問題によって発生する空室は、同じ市場に所在する競合物件に対して、対象物件の競争力が低下することが原因です。

最近の部屋探しは住宅情報提供会社のWebサイトを用いて行うことが一般的ですので、居住希望者は簡単に物件の条件を比較することができます。

大都市圏の場合、一つの駅周辺に存在する空室は膨大な数になりますので、平均的なレベルから外れた物件は表示順位が下がり、居住希望者の目に届かない(つまり空室が埋まらない)可能性が高くなります。

ミクロ的要因には以下のケースが考えられます。

  • 賃料、敷金、礼金が相場よりも高い
  • 建物が競合物件よりも古い、汚れている、傷んでいる
  • 設備が競合物件よりも古い、傷んでいる、設備が無い
  • 管理が行き届いていない、苦情等への対応が遅い

マクロ市場(広域的な市場動向)の問題

マクロ市場(広域的な市場動向)の問題は、需要と供給のミスマッチが原因です。

そもそもの供給戦略自体が間違っているため、この問題が生じている場合の空室の対策には、大きな労力とコストが必要となります。

広域的な市場動向の問題には以下のケースが考えられます。

  • 需要を無視した大量の新築物件の供給
  • 需要とは異なる物件の供給
 

マクロ市場(長期的な市場動向)の問題

マクロ市場(長期的な市場動向)の問題は、現状は大きな問題ではなくとも、長期的には需要と供給のバランスが崩れていく可能性が高いものです。これらの変化によってプラスの影響を受ける地域もありますが、多くの地域はマイナスの影響を受けることになります。

長期的な市場動向の問題には以下のケースが考えられます。

  • 人口や世帯数の変化
  • 少子高齢化の進行
  • 未婚化の進行
  • 都心回帰
  • 外国人比率の変化
  • 賃貸住宅ストックの増加
 

物件および市場の分析

物件の空室対策を行う上で、市場調査は基本のキとなります。

どのような間取りが多いか、競合はどのくらいあるか、市場賃料や敷金・礼金の相場、周辺の空室状況、どのような人が住んでいるか、住環境は良いか等を明らかにすることで、空室がミクロ市場の原因によるものか、マクロ市場の原因によるものかの切り分けを行うことができます。

物件周辺の相場や需要の調査を行うために活用できるのが日本情報クリエイトの「空室対策ロボ」(図2)です。

短時間で、誰でも均質でかつ詳細な市場調査レポートを作成することが可能です。

図2 「空室対策ロボ」

また、クリエイト賃貸住宅インデックス「CRIX」(図3)を用いることにより、都道府県単位の広域市場の賃料と空室率の動向をアパート、マンション別、面積帯別、間取り別に確認することができます。

さらに官公庁や各種調査機関等のデータを利用することで、長期的な市場動向の分析を行うことができます。

図3 「CRIX」

なお、市場の分析結果が入手できたとしても、物件自体の情報が管理されていなければ比較して、空室対策を実施することができません。

「賃貸革命」(図4)のような物件管理システムでデータを管理し、市場分析と物件情報を突合することで、効果的な空室対策の検討を効率的に実施することが可能となります。

図4 「賃貸革命」

筆者プロフィール

[藤井 和之 ふじい・かずゆき]

1987年東京電機大学大学院理工学研究科修士課程修了。
清水建設㈱、Realm Business Solutions(現ARGUS Software)、日本レップ(現Goodman Japan)、㈱タスを経て、2022年より現職。
様々な公開情報から市場動向を類推する分析を得意とする。
不動産証券化協会認定マスター、MRICS(英国王立チャータード・サーベイヤーズ協会メンバー)、宅地建物取引士。

 

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