不動産業界への電子帳簿保存法改正の影響とは?対応方法も解説

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電子帳簿保存法が改正されました。不動産業界にも影響があり、書類の電子化を進めていくうえで重要です。しかし、改正されたことはわかっていても、具体的な内容や対応方法が把握できていないという人も多いのではないでしょうか。本記事では、直近の電子帳簿保存法の改正内容や、不動産会社の対応方法について解説します。

 

電子帳簿保存法とは?

電子帳簿保存法は1998年に制定された法律で、一部の書類をデータ化して保存することを認めた内容のものです。しかし、制定された当時の内容では、不動産業界で使用する書類の大半は対象にされていませんでした。今回の改正によって、不動産業界で使用される書類の多くがデータ化による保存が可能になりました。

 

電子帳簿保存法で認められる保存方法 

電子帳簿保存法においては、書類をデータ化して保存する場合、次のような保存方法が認められています。

 

電子帳簿等保存

電子帳簿等保存とは、最初からオフィスソフトや専用ソフトなどで作成した帳簿を保存する方法です。作成したデータを紙に印刷する必要はなく、あくまで電子データのまま保存します。保存場所は、迅速にアクセスできるところならどこでも問題ありません。パソコンのSSDやHDDに保存するだけでなく、クラウドなどに保存しておくこともできます。

 

スキャナ保存 

スキャナ保存は、紙の書類をスキャナで読み取って電子化する方法です。紙面で作成した書類を電子化して保存したい場合に用います。スキャナ保存なら、古い書類も電子化できるため便利です。また、自社で作成した書類だけでなく、取引相手が作成した書類も、スキャナ保存によって電子化できます。

 

電子取引

電子取引は電子的に授受した書類を、電子データのまま保存する方法です。たとえば、PDFファイルをメールの添付データとして送付した場合などが該当します。2023年12月31日までは紙に印刷するものと電子データ保存の共存は認められていましたが、2024年1月1日から電子取引においては紙に印刷しての保存は禁止されています。また、これには自分が取引相手に送付したものも、取引相手から自分に送付されてきたものも含まれます。

 

2022年から不動産業界で電子化が認められた書類の種類

電子帳簿保存法が制定された当時から、税務書類、契約書、請求書、見積書などは電子化が認められていました。いずれも不動産業界だけでなく、他業種でも使われている書類です。一方で、不動産取引で使用される書類は、これまで電子化が認められていませんでした。 

しかし、2022年から不動産業界においても一部書類の電子化が認められました。電子化が解禁された書類は、次のとおりです。 

  • 媒介契約書
  • 重要事項説明書 
  • 賃貸借契約書
  • 売買契約書
  • 定期借地権設定契約書
  • 定期建物賃貸借契約書
 

類を電子化するメリット

これまで紙で作成して保存していた書類を電子化することで、さまざまなメリットが得られます。以下では、書類を電子化するメリットについて解説します。

 

コストダウン

不動産取引で必要な書類を紙で作成すると、相手に郵送しなければならないでしょう。電子化すれば郵送にかかっていた切手代や封筒代、印刷代などのコストを節約できます。重要事項説明は、ビデオチャットツールを使用して行えるため、担当者が出向く必要もありません。人件費の節約にもつながります。 

さらに、書類保管のためのスペースを減らせることもメリットです。これまで倉庫を借りて保管していたのであれば、その分のコストも節約できます。 

 

業務効率化 

不動産取引で使用する書類を相手に電子データのまま送信すれば、郵送するよりも手間がかからなくなります。相手に届くまで日数を要することもありません。業務をスムーズに進められます。 

また、書類だと整理が必要ですが、電子データなら手間がかかりません。日付や取引相手などで自動的に整理できます。必要なときには手早く探せるため、業務にかかる時間も短縮できるでしょう。 

 

セキュリティ向上

紙の書類だと、保管場所に入れれば、誰でも中身を閲覧したり持ち去ったりできてしまいます。その点、電子化された書類ならアクセス権を設定できて、アクセス権のない人は閲覧できません。 

アクセス権のある人でもアクセスした場合にはログが残ります。不審な点があれば、いつ誰がアクセスしたのか確認可能です。そのため、紙の書類を使用するよりもセキュリティが向上します。さらに、クラウドにデータを保管しておけば、災害時などのデータが滅失するリスクも低減できるでしょう。 

 

2024年以降はどう対応すべきか

電子帳簿保存法の改正を受けて、不動産会社では2024年以降どのように対応すべきなのでしょうか。ここでは、不動産会社における2024年以降の対応方法について解説します。 

 

電子契約システムの導入 

契約書を電子化するには、電子契約システムが必要です。まだ導入していない不動産会社では、電子契約システムを導入しなければなりません。また、電子契約システムの種類により、タイムスタンプ機能の有無や、データの保存環境などが異なります。いくつか比較したうえで、自社にあった電子契約システムを選びましょう。 

 

データの保存場所の明確化

電子データで保存した書類は、いつでもアクセスできる状態にしておかなければなりません。電子化しても保存場所がバラバラだと必要なときに探せず、アクセスできない可能性があります。電子化したデータの保存場所は明確に決めておきましょう。また、万が一データが消失してしまった場合に備えて、バックアップを取る体制を整えておくことが望ましいです。

 

業務フローの再確立

書類の電子化を行えば、業務の進め方もこれまでとは変わってきます。移行直後は、どう進めればよいのかわからず、時間がかかってしまうこともあるかもしれません。紙の書類から電子データにスムーズに移行するためには、業務フローの再確立が必要になります。マニュアルも整備しておくとよいでしょう。

 

改正によって手間が減る可能性がある作業

電子帳簿保存法改正の対応に手間がかかる面もありますが、逆に手間を減らせる可能性もあります。

 

タイムスタンプ要件の緩和 

以前までは書類の受領者がスキャナ保存する際に、3営業日以内のタイムスタンプが必要でした。そのため、期間の短さに負担を感じていた不動産会社も少なくありませんでした。今回の改正では、期間が2か月以内に延長され、修正や削除の痕跡が残る書類に関しては、タイムスタンプが不要になりました。

 

検索要件の緩和 

検索要件は取引年月日、取引金額、取引相手のみです。また、税務署員に要求された書類をダウンロードできれば、問題がないものとして扱われます。以前までは、範囲指定や複数項目を組み合わせた検索など、複雑な要件でした。今回の改正により、このような複雑さが軽減され、業務負担が軽くなります。 

 

事前承認制度の廃止 

以前までは紙の書類から電子帳簿へ移行する際に、税務署への書類提出と事前承認が必要でした。手間がかかるということで、電子帳簿へ移行していなかった不動産会社もあるかもしれません。今回の改正によって、特に手続きを行うことなく、電子帳簿に移行できるようになりました。

 

適正事務処理要件の廃止 

以前まで、国税関係書類をスキャナ保存する際には、不正防止のため厳格な事務処理が要求されていました。しかし、今回の改正で廃止されたため、スキャナ保存がしやすくなります。 

 

書面保存の廃止 

電子取引においては、電子化されたデータに関してデータのまま保存することが義務づけられました。以前までは、印刷した書面でも認められていましたが、今後は認められなくなります。不動産会社を含め、事業者にとって不利な内容の改正ですが、手間を減らすきっかけになる面もあるでしょう。一方、電子帳簿等の保存やスキャナー保存に関しては任意のため全ての電子化されたデータが書面保存してはいけないわけではない点に注意してください。

 

不動産業界で電子帳簿保存法への対応が遅れた場合の注意点

電子帳簿保存法への対応が遅れた場合には、次のような点に注意が必要です。

 

税務上のペナルティの対象になる可能性 

契約書類の電子化に関わる内容の申告漏れや隠蔽などがあった場合には、重加算税が10%上乗せされるようになります。対応が遅れた場合に対象になってしまう可能性があるため、十分に注意しなければなりません。たとえば、業務フローが明確に確立されていないと、変更しただけのつもりでも、隠蔽と判断されてしまう可能性もあります。 

 

青色申告が取り消しになる可能性

個人事業主の場合、電子帳簿保存法に則って書類を保存していないと、青色申告の取り消し対象になってしまう可能性があります。ただし、悪質なケースでない限り、実際に取り消しになる可能性は高くありません。そのため、申告が正しく行われていれば、それほど心配する必要はないでしょう。

 

会社法違反で罰則の対象になる可能性

法人の場合には、電子帳簿保存法に対応していないと、会社法違反になる可能性があります。会社法976条の「帳簿又は書類若しくは電磁的記録を備え置かなかったとき」に該当してしまう恐れがあるためです。100万円以下の過料の罰則も規定されています。もし該当すると判断された場合には、罰則が適用されることもあるため、注意が必要です。 

 

まとめ

電子帳簿保存法の改正により不動産業界では、取引で使用する契約書類のほとんどを電子化できるようになります。コストダウンや業務効率化などメリットが大きいです。しかし、電子化に対応するため、電子契約システムの導入や業務フローの再確立などが必要になります。対応が遅れると、ペナルティを受ける可能性もあるため、早めに対応しておきましょう。

賃貸管理会社様であれば、日本情報クリエイトの不動産専用の電子契約システムや、くらさぽコネクトオーナーアプリを利用することで、コストダウンや業務好効率化につながります。 

また、日本情報クリエイトは、賃貸管理ソフト導入実績は1位※1で、顧客満足度・サポート充実度・信頼度も1位※2です。不動産業界に特化したIT活用のソリューション企業として29年間、数多くのお客様にご支持を頂いております。全国30拠点を持ち、導入後もお客様を安心サポートいたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。 

※1:2020年全国賃貸管理ビジネス協会WEBアンケート調べ(2020年1月17日~2020年1月31日、2020年2月14日~2020年2月20日) 

※2:アンケートモニター提供元:ゼネラルリサーチ 

調査期間:2018年5月18日~5月30日 調査方法:インターネット調査 

調査概要:賃貸管理システム10社を対象にしたサイト比較イメージ調査 

調査対象:全国の20代~50代の男女466名 

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